キャラ紹介 ライナス

ライナス=ジーニアスのキャラクター紹介。
機を逃すとずっと紹介できなさそうなのでこの辺で。

・劇中登場時にして17歳。
・正真正銘ロゼッタの息子。しかし祖父ユリシーズに激似。
・男性。身長188cm、体重70kg。金髪。
・使用武器は剣。クラスはソードナイト。
・主要属性はおそらく斬。守護精霊は氷。
・父方は、実はロゼッタがかつて所属していた『チーム』の旧リーダー。
 ロゼッタが後を託された相手でもある偉大な男。ちなみに健在。
・母親からは複雑な愛情を注がれたが、だんだん祖父似になってきている。
・自立するや否や単独行動の末にスプレッダーを追い始める。
 勇者軍の理念重視というよりは、単に行く所行く所に
 スプレッダー幼生体がいて、破壊を撒き散らしているのを看過出来ないため。
・趣味はカードゲーム。と言ってもトランプ一辺倒だが。
・ユリシーズと違って言動に角が立たないタイプ。たぶん父親のおかげ。
・性格も割と穏やかかつ柔和ではあるが、芯がやはりジーニアス家。
 論理的かつ冷静に行動するよう心掛けて動く。
・口癖は『で、俺は何かしたほうがいいのかな?』。しかしこう言い出した時は
 やるべき事を理解し、動く寸前もしくは
 動き始めている事がほとんどなので大した意味が無い。
・新世代勇者軍の中では相当に年上かつ大柄のため、
 なんかみんながマスコットに見える。
・独力で必殺の個人スキル『疾風剣』を復活させる。
・狭い場所が苦手という弱点をもつ。幼い頃の悪戯の代償としての仕置きが原因。
・好物はファストフード全般。

さあ、早く本編に戻らなきゃ。

テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

第三章−第二幕− ウィルスユーザーズ

「んむー」
妖精の森、妖精城居住区は本当に水だらけの区域だ。
川の下流にある事もあって、道か、畑か、建物か、それ以外は
全て水と言っても過言ではないと言っていいだろう。
もちろん建物の密度も人間の居住区と比べて
格段に高いわけではないので、結果として水の面積が多い。
というわけで妖精族は魚を食する事も多い。

妖精族の一員である、ブルーノ=ルストという児童がいる。
これでも勇者軍の時代を担うメインメンバーだが、未だ子供だ。
未だ幼児である弟のマーカス=アニーズィを連れて、
道端に座って、のんきに釣り糸など垂らしていた。
魚を釣る事は生活の一部として、確かにそこに存在するのだ。
今日は川の水の量が多いからだろうか、魚も多い。
バケツ一杯に釣れているのでそろそろやめようかと思い、
ブルーノはとりあえず釣竿を引き上げようとした。
「ん?」
しかし竿が引っ掛かっている。何かを釣ったらしい。
「おにーちゃん、もう帰ろう? お母さん心配するよ?」
「分かってるよ、マーカス。今引っ掛かったので最後にする」
ばしゃばしゃばしゃ!
しかし引っ掛かった魚らしきものは大暴れを始めた。
よほど釣り針に引っ掛かった事が心外だったのだろうか。
「マーカス、一緒に引っ張り上げて!」
「分かった!」
嬉々としてマーカスも加わり、二人で力を合わせて引っ張る。
「うーんしょ!」
「うーんしょ!」
これは大物だ。釣竿が壊れないかどうかだけが心配である。
「どりゃー!」
どばっしゃー!
二人一斉に全力で引き上げると、大魚が釣れた。
しかし、それは魚ではなかった。
「げはごほげほッ!」
激しく咳き込む元大魚と思われていたもの。
「遭難者だー」
「人間の人だー」
二人で驚くも、比較的対処は冷静だった。
「ねーねーねー! すごいの釣ったー!」
すると、ブルーノ、マーカスからやや離れた所にいた
クォーターエルフの背の高い女性が近付いてきた。
「ありゃりゃ。また凄いの釣ったね。で、君は生きてる?」
ようやく落ち着いたのか、釣られた人間が返答する。
「うむ、何とかな。川に転落して立ち泳ぎで凌いでいたら、
 水草に引っ掛かって動けなくなって溺れる寸前だったのだ。
 正直、命が危なかった。是非礼を言わせてもらいたい」
「いーのいーの。困った時は何とやらってね」
クォーターエルフの女性はさほど気にしてもいないのか、
ブルーノとマーカスに話しかける。
「ねー、エイリアは? さっきまでいたんでしょ?」
「ずっと待ってんのも退屈だからって見回りに出たよー。
 今、森の外には危ない奴がいるんだって言ってたー」
「そう、危ない奴がいる!」
釣られた男が急に元気を取り戻し、立ち上がった。
「おおー、タフだね」
「うむ、お嬢さん。伊達に勇者軍をやっているわけではないからな!」
そこまで言うと、クォーターエルフの女性の表情が変わった。
「勇者軍? 君が?」
「そう。ジーク=ルーンヴィッツァー!」
「ルーンヴィッツァー?」
更に女性の表情が変わる。
「そっか……そういう経緯でそういう名前の人なら、間違いないのかもね。
 その証拠に、なんか川からまた誰か来たっぽいし、ね」
ジークの流れてきたと思われる方向から、人が二人来ている。
「お客さんがいっぱいだー」
無邪気にはしゃぐブルーノとマーカスは置いといて、女性は
二人を出迎える事にした。
「君達はこの子を迎えに来たんでしょ? 違う?」
「あっ、はい! そーです!」
「ジーク、無事だったね」
二人の客人はよほど走ったのだろう。少し息を切らしていた。
「で、君達は勇者軍、違う?」
そこまで聞くと、二人は……特にライナスが驚いた。
「俺達、そんなに有名人だったかな?」
「あたしの目はごまかせないよ、ってのも嘘だけど。特に金髪の君は、
 あたしの知ってる人によく似てるから。ユリシーズ=ジーニアス。
 聞き覚えあるんでしょ? たぶん、ジーニアス家の君?」
「あ、はい。それは祖父なんだ。俺はライナス=ジーニアス」
「ついでに私は、ソニア=メーベルヴァーゲンです」
「そう、やっぱり」
女性はにっこりと微笑んだ。
「あたしはね。レイリア=ルスト。ルスト家直系セシリア=ルストの妹で、
 この子達はお姉の子供達だよ。つまり私が叔母ってことかな」
「ルスト?」
今度はライナスの表情が変わった。
「じゃあ仲間じゃないか。主力部隊に参加しなくていいんですか?」
すると、レイリアは困った顔をした。
「そうしたいのは山々なんだけど、うちのお姉はこの子達の面倒を
 見るのが忙しくてそれどころじゃなくってさ。んで、あたしと妹が
 前線に出なきゃなんないんだけど、実はここ最近、噂の怪獣が
 妖精の森付近でも目撃されてて、動くなって言われてるの。
 あたし等が動くなら、それを片付けてからじゃないと……」
「そうなんですか……」
ソニアが神妙に頷く。スプレッダー幼生体の脅威を
数多く目撃し、またその攻撃を我が身に受けたソニアならではの
態度とも言えるのだろう。
「あ、でも心配しないで。妹が戻ってきたら、捜索をかけて
 攻め込まれる前に攻勢を仕掛けるつもりなんだ。
 よかったら、手伝ってくれるかな?」
「うむ、この子達を守るために私も手伝おう!」
一番に賛成したのはジークだった。恩返しのつもりだろう。
「そうだね。ジタバタ動いても仕方が無い。
 ここでジルベルト君達を待つのが得策じゃないかな」
と、ライナス。
「どのみち、ここのスプレッダー幼生体を片付けるつもりで来たんでしょ?
 だったら結果はどうあれ、一緒じゃない。やるわ」
最後にソニア。結論は出た。
「おーし、じゃあブルーノ、マーカス。あんた達は帰っときなさい。
 久しぶりに妖精の森が戦場になっちゃうよ?」
「分かったー」
「うん!」
レイリアの指示で二人は引き上げた。もちろん釣った魚は忘れない。
「さて、合流もした事だし、さっそくレーダーでも見て索敵を……」
と、ソニアが端末を開こうとした瞬間。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
けたたましい特有の金切り声。スプレッダー幼生体だ。
距離もそう遠くない。水の中を進んできたらしく、
ほとんど音も無く、妖精の森に侵入してきていた。
「あいつ、いつの間に!」
ソニアの怒声と同時に、スプレッダー幼生体は木を飲み込み始めた。
「何をする気かしら……」
飲み込んだのは針葉樹である。
すると、スプレッダー幼生体は、針葉樹の尖った葉を
大量に吐き出して吹き付けてきた。
それはさながら吹き矢のように鋭い攻撃であった。
当たれば流石にただではすまない。
「はっ!」
全員がそこから飛び退く。流石にここまであからさまな攻撃に
誰も被弾したりはしないのであった。

真っ先に跳躍したのはソニアである。
「どっせぇぇい!」
その鉄拳がスプレッダー幼生体の眼球へと炸裂する。
ばがッ!
さながら水晶か何かのごとく砕け散る眼球。
「たぁぁぁぁぁぁッ!!」
さらに二撃、三撃。
猛攻撃にスプレッダー幼生体の巨体がたじろぐ。
「ライナスさん、行って!」
ソニアの指示でライナスが動き出した。次いで跳躍。
ざばっ!
しかしスプレッダー幼生体が水の中で暴れ回るせいで水飛沫があがり、
それがライナスの接近を不可能にしていた。
多脚を回避できなければダメージは大だからだ。
「しょうがないか、ジーク! 行ける!?」
次いでジークが跳躍。多脚が襲ってきたが、ジークは斧を振り回す。
がぎゃっ! がぎゃん!!
多脚のいくつもが彼の斧一つによって粉砕されゆく。
「へぇ、凄いな」
ライナスも素直に感心した。どうやらここは二人の独壇場らしい。
ふと、ライナスが後ろに目をやった。
すると、慌ててレイリアは銃を組み立て始めていた。
平時のため、準備が不充分だったのだ。
そして組みあがったのは、大型の狙撃銃である。
まともな人間なら銃座を使わなければ撃てる代物ではない。
「よっし、いくよ!」
自動装填式の銃をスプレッダー幼生体に向けた。
「ゴツいね」
「あたしならでは、かな。さあ、目を閉じて。危ないよ」
「?」
言われるままにライナスは目を閉じた。
「ソニア、ジークも! 目を閉じて!」
ソニアとジークは攻撃を一時止め、離れて目を閉じる。
多脚の大多数を失ったスプレッダー幼生体は暴れる他に成す術が無い。
「閃光弾、発射!」
だんだんだんだんだんだんだん!
凄まじい連射と照準技術である。スプレッダー幼生体の複眼ことごとくに
閃光弾が命中し、直後、炸裂。スプレッダー幼生体は視界を封じられた。
「ぎゃっ、ぎゃぁぁがぁぁ! ぎゃっ! ぎゃふぅっ!!」
スプレッダー幼生体は息も絶え絶えだ。
「実弾装填!」
レイリアが更に攻撃用の弾を装填し、近距離要員に負けず劣らずの
跳躍をもって、スプレッダーの十字口付近に乗っかった。
「狙撃開始!」
だんだんだんだんだんだんだん!
千メートル以上を狙い撃つための貫通式銃弾を零距離から乱射するレイリア。
「ぎゃ……ああ……あああ!」
体液らしきものが飛び散り、みるみるうちに
スプレッダー幼生体の動きが鈍くなっていくのがよく分かる。
「狙撃かなぁ……?」
ライナスの素朴な疑問に、ソニアとジークは答える術を持たない。

そして一分後。
スプレッダー幼生体はものの見事にズタボロに駆逐された。
あれだけ零距離乱射したにも関わらず、銃身にまったく異常は無さそうだった。
まったくもって呆れるほどの質の高さである。
「ほい、任務完了、っと。ところでこの死体どうにかなんないの?
 森に置いとかれるのも邪魔なんだけど」
すると、ソニアが困った顔をした。
「うーむ、除去装置のビーム・カーテン部隊はここには来ていないし、
 そもそも水中じゃ運用出来ないんじゃない? あの重機って」
「確かに……」
ジークも困った顔をする。

「なら、私達が引き取ってあげる」
すたっ。
突如として空から降ってきた女性がいた。
怪しげな覆面のせいか、声もまともなものとして聞くには怪しい。
「誰なの!?」
ソニアが怒鳴ると、女性は、名乗り出した。
「私は新設組織『ウィルスユーザーズ』の幹部。このスプレッダーの
 幼生体が持つ病原菌の情報を保有し、人類の繁栄に
 貢献せしめるための集団。それが『ウィルスユーザーズ』。
 そして私の名はコードネーム<ネイルキャット>よ」
ネイルキャット、と名乗ったコードネームの女性が高く手を掲げると
ヘリコプターが降下してきて、ワイヤーをスプレッダー幼生体の死骸に取り付けた。
「待て! それをどうするつもりだ! それは勇者軍が除去する!
 勝手に部外者が手を出すな!! 分かっているのか!?」
ジークの怒声も一向に意に介さないネイルキャット。
「くそっ!」
ジークが跳躍するがもう遅かった。ヘリコプターは高度を上げ始めた。
勇者軍の度外視チューン並みの出力を持ったヘリのようである。
「背中を借りるよ」
「うおッ!?」
と、ライナス。ジークを踏み台にして更に跳躍した。
一気にネイルキャットの元へ到達するつもりなのだろう。
高度も悪くなかった。
すると、ネイルキャットは弓を構え始めた。
びしゅっ、びしゅっ!
恐ろしく正確な狙いがライナスをかすめる。そこで一気に失速。
スピードを失い、ライナスもやむなく落下した。
「くっ……やる!」
ジーク、ついでライナスが着地する頃には高度を上げ、
もはや到達は不可能な高度になっていた。
「任せて」
レイリアが狙撃銃を構える。今度は正しい狙撃だ。
風圧、高度、距離、角度。全てを算出し、冷徹なまでに
ヘリコプターのワイヤーめがけて狙撃。

だんだんだんだんっ!

しかしワイヤーは切れなかった。凄まじい頑強さのワイヤーだった。
また距離も開きすぎていた。もう少し近かったならあるいは
レイリアの狙撃も成功していたかもしれない。
「こないだライゼリーネ・タウンから幼生体の死骸を
 勝手に持って行ったのも、きっとあいつらなのね!」
ソニアの怒声が響き渡る。
しかしライナスは冷静だった。
「だろうね。しかも組織と言っていた。ウィルスユーザーズ。
 スプレッダーに加えて、俺達の敵対組織ってところ、かな」
レイリアはすぐに端末を開き、索敵する。
倒したスプレッダー幼生体とは違う方位から、大きなエネルギー反応。
しかも、これもかなり居住区に近い。非常にまずい事態だ。
「三人とも、まだ動ける?」
レイリアが訊くと、三人ともすぐに頷いた。
どうやら非常事態が終わっていないという事を概ね理解したようである。
「うん、いい子達。じゃあ行くよ。私の妹もあるいはそこにいるのかも。
 スプレッダーだっけ。幼生体か何か知らないけど、止めなきゃ!!」
「うむ!!」
ジークの返事が終わるや否や、四人は村を離れ、走り出した。

一方、機上の人となったネイルキャットは。一人満足げに頷いた。
「スプレッダーを捕獲する前に二度までも始末、とはね。
 流石にやるじゃない、勇者軍ってのは」
すると、機長が反論してくる。
「ですが、いつまでもあんな連中に好き放題やらせておく理由もありません。
 勇者軍に流されない世界作り、この計画なら可能かと思います」
「そーね」
と、適当に機長へ生返事をしてやるネイルキャット。
(でもそんなのどうでもいいの。私はあの子がどうなっているのか、
 どう成長してのけるのかを見届けたいだけなんだから……)
そして妖精の森から、ネイルキャット中隊は離脱していった。
スプレッダー幼生体の死骸と共に。


<第三章−第三幕− へと続く>

テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

第三章−第一幕− 君と僕との関係性

妖精の森。
それはナインサークルと呼ばれた新たなる惑星アースの生態系の一つ、
妖精族の最大勢力の住まう土地の俗称である。

ナインサークル。それは惑星アースの生態系の秩序である。
自らが力尽きる時、最後の力を振り絞って生態系を作り上げた
『魔神王』と呼ばれる存在を一つの種族として扱い、
惑星アースの先住霊質生命体同士である『神族』と『魔族』。
魔神王に作られた、独特の外観と生態、能力を持つ奇怪な生物『怪物族』。
爬虫類をベースにして作られた巨大生物『竜族』。
自然環境が生命として具現化した『精霊族』。
人間をベースとして創造された半人生命体『亜人族』。
更には自然の代弁者として生きる『妖精族』がいる。
そして惑星アース固有の自然から生まれた生命体、人間を含む
『自然生命族』こそがこの惑星アースの最大勢力であった。

そのナインサークルの妖精族の住まう地、それが妖精の森。
水と大地を愛した生命達の住処である。
現在の惑星アースでもっとも、水と空気の清浄な土地の一つでもある。

ライナス=ジーニアスを新たに加えた主力部隊は、
そこへ向かって一直線に突き進んでいた。
その中にいる隊長、ジルベルト=ストレンジャーの頭の上やら
肩の上やらには、愛猫の『大福』『きなこ』『みたらし』『黒ごま』が乗っていたりして
なかなかに微笑ましかったりする。
ソニアはかねてより考えていた事を実行に移してみる。

ひょい。

「みゃーん」
大福を奪われ、ジルベルトが振り向いた。
(何するの?)
ジルベルトが心配そうに見つめる中、ソニアは構わず、
自らのポーチの中から小さな服のようなものを取り出した。
大福に着せてみようというのである。
「みゃーっ! みゃーっ!」
大福は何やら嫌がっているが、ソニアはお構いなしだ。
たちまち服を着せられ、きなこと交代させられる。
「にぎゃー!」
「可愛いでしょ? 動物用の服」
ソニアがにっこり微笑むと、ユイナ姫辺りも同意してくる。
「わあ、可愛いですねー。なんでこんなの持ってるんですか?」
「前に家にいたペットのお下がりなのよ」
と、自慢げにソニア。
とりあえずライナスとジークは特に興味も無さそうである。
「やめて。仔猫が嫌がってる」
と、シエル。
「お兄ちゃんがそう訴えてるわ」
ソニアが見ると、ジルベルトは悲しそうな目で訴えていた。
ただの一言も発さずに。
(やめてあげて。この子達が嫌がってるから)
「うっ」
同時にたじろぐソニアとユイナ姫。
小動物と一緒に純真無垢な目で訴えかけてくるその攻撃に、
抗する術など、二人には無かったのだった。
「ごっ、ごめん。服って動物は嫌がるのね」
ソニアは慌ててみたらしに着せようとした服を引っ込め、
次いで、大福ときなこの服も脱がせてあげた。
(人間と違って動物は自分では服を脱げないから
 苦痛なだけなんだって。分かってくれると、僕も嬉しい)
そう言わんばかりのプレッシャーが特に主犯のソニアを襲う。
「ごめん、ごめんてば! 謝ってるじゃない、もう!」
「ジル君、許して。お願い!」
調子に乗ったユイナ姫も同罪である。
珍しくジルベルトも、シエルも憤慨していた。
ストレンジャー家は何の因果か、
代々かつ筋金入りの猫好きである。ユイナ姫はともかく、
ソニアは若干逆切れ気味なのでいまいち誠意が足りない。
(もうしない?)
本気で悲しそうな目で訴えてくるジルベルト。
「しないわよ! そんなにこの子達が嫌がるなら!」
「そうそう、もうしませんから! ね?」
「うにゃー」
黒ごまが一声鳴く。
「悪気が無いから許してあげるって、黒ごまが」
と、シエル。

どうやら猫は猫なりに気を遣ってくれるらしい。
そんな光景を見ながら、ライナスとジークは
『やれやれ』と言わんばかりに、互いに肩をすくめてみせる。

そしてようやく許してもらってから、ソニアはライナスに
相談してみる事にした。
「ねえ、ライナスさん。やっぱ猫に服って駄目かしら?
 私は……可愛いと思うんだけどなぁ」
「うーん、どうかな。僕もあんまり賛成できないかも。
 話を聞くと彼はテレパスらしいじゃないか。
 猫の心の声だってダイレクトに伝わると思う。
 飼い主としてはそれが悲しいんじゃないかな」
「妹のシエルだってそうよ。確かに悪い事したかしら……」
本格的にしょげ始めるソニアに対し、ライナスは
的確にアドバイスをしてやる。
「でも飼い猫だし、首輪の一つも無いとマズいよねぇ。
 どっかで野良猫と誤認されて捕獲されでもしたら、
 流石にジルベルト君も悲しむと思うよ」
「そっか、流石はライナスさん、的確っ!」
びっ! と指差して絶賛するソニア。
「こらこら、指を差すのはやめた方がいいと思う。
 首輪も嫌がるかもしれないけど、こればっかりは
 飼い主の義務と思って諦めてもらわないと、ね?」
「分かった、ジルベルト君とシエルに相談してみる!」
立ち直りの早いソニアであった。

説得する事十分。首輪の件は何とか承諾してもらい、
大福には青、きなこには白、みたらしには緑、黒ごまには赤の首輪が
それぞれ装備される事で何とか両者は和解するのであった。
「腹減ったー」
そうした前後の流れとまったく関係の無い事を
ジークはずっと呟いていたりするのだが、
それはまあどうでもいい話だったりする。

山を一つ越えつつあり、妖精の森の、妖精王居城へと
次第に近付きつつある勇者軍だったが、露払いを任されて
ずっと先頭を歩いていたジークに、突然異変が起こった。
山道を歩いていたはずのジークがいきなり転倒したのだ。
「あだっ!?」
その異変に気付いた時にはもう遅かった。
山道の端がいきなり崩れ出したのだ。
「ジーク!」
シエルの叫びも虚しく、坂道を滑り落ちていくジーク。
「うおぉぉぉぉぉッ!?」
ちゃぽん。
そして川へと一直線に滑り落ち、そのまま流されていく。
「ちょっ、どこ行くの、ジーク!? 戻って来なさい!!」
シエルの叫び声はジークに届いてはいた。
「も、戻りたいが……! 川の流れが思ったより……がふっ、激しっ!」
「ちょっと、溺れ死んだりしないでしょうね!」
救助しに行こうにも、地盤が不安定過ぎてシエルの足では
不充分のようである。
「大丈夫だ! たかが水位の上がった川程度! 立ち泳ぎで凌ぎ切る!
 シエル、みんな! 下流で会おう、待っているぞおおおおぉぉぉぉ……!」
ジークが本当に立ち泳ぎしながら流されていくのを見て、
ある意味安心したユイナ姫は、状況を整理にかかる。
「ちょっと足場が不安定過ぎて、シエルさんも私も無理っぽいですね。
 誰か、そのまま川べりから追跡出来ないものでしょうか?」
(ワイヤーを使えば木を伝えなくはないけど、持久力的に僕も無理そう)
と、いう意図でジルベルトも首をふるふると振ってみる。
「けど、見失うのは得策じゃないわね。合流に時間がかかるわ」
と、ソニア。
「こういう状況なら自信があるもの。私が追ってみるわ」
ソニアは川の下流へと向かって、崖を一人で駆け下りる。
「で、俺はどうすればいい?」
ライナスも健脚に自信があるのだろう。そう言いながらも既に
ソニアの後を追って動き出した。言動は全く意味を成さないのだが。
これで事実上、戦力は真っ二つに分断される形となる。
期せずして、3:3の二小隊体制で動く事となってしまったのだ。

それから一時間後、ソニアは川べりで見事に気を失っている
ジークを発見した。どうやら頭を軽く打ったらしい。
「ちょっと、何気を失ってんの、しゃきっとしなさい!」
揺り起こそうと近寄ると、更にジークは流され始めた。
ジークが目を覚まそうと迂闊に動いたことで、
偶然服が引っ掛かっていた岩から、外れたらしい。
「む……おおお!?」
「ジークぅッ!」
ソニアの怒声も虚しく、不運なことに、ジークは更に下流に流され行く。
ライナスもそこでソニアに追いついた。そう時間はかかっていないが、
流石に川に飛び込むだけの技術を持ち合わせていない。
いや、仮に持ち合わせていたとしても、増水した川に
自ら飛び込むのは愚行である。
「追おう。まだ追いつけるよ」
「分かってるわ!」
ライナスの指示で再度、二人は動き出した。
それにある意味そのまま立ち泳ぎで凌いでくれるなら問題はない。
この先に目的地点である、妖精の森中央部、
妖精王セリナ=ワルキューレ=ヴァルキリーの居城があるはずだからだ。
結果的には目標地点にいち早く到達する事になる。
あとはジルベルト達を座して待っていればいいだけなのだ。
ライナスも、ソニアも、そう思っていた。

一方、ジルベルト達も川の地理を再確認し、
最終的に目的地点である妖精王居城区周辺に川の流れが
行き着く事を理解したため、すぐに行軍を再開した。
「しかしジークさんも運の無い人ですね……たまたま緩んだ地盤に
 足を踏み入れてしまうだなんて……」
ユイナ姫の独白に、いちいち大仰に頷くジルベルト。
「ドジなんだから、まったくもう」
シエルも半分怒ってはいるが、やはり内心心配である。
せめてソニアかライナスからの報告があれば良いのだが、
恐らく必死の追跡中ではそんな余裕さえないのだろう。

しかしそんな事をやっている間にも
妖精の森に不穏なる影が現れていた。
スプレッダーの幼生体と、勇者軍以外にそれを追跡する
謎の人影が……


<第三章−第二幕− へ続く>

テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

キャラ紹介 ジーク

新キャラとして突如登場した、
ジーク=ルーンヴィッツァーのキャラ紹介。

・劇中登場時点で18歳。ソニアと同じく軍曹。
・男性。身長166cm、体重51kg。金髪。
・使用武器は斧。クラスはアックスナイト。
・主要属性はおそらく斬。守護精霊は雷。
・エレイン=トリクシーとレオン=ルーンヴィッツァーの孫。
・実に分かりやすいはらぺこキャラ。
・どうも動物に嫌われる性質はそのまま。しかし駿足。
・家を破壊された事に大きく腹を立て、スプレッダーを付け狙う。
・一人称は「私」若干固い口調が多いっぽい。体育会系、しかし偉そう。
・比較的常識人ではあるが、凄まじい不幸体質なのか、よく不運な目に遭う。
・父親と母親、ならびに祖父母夫妻は共に健在だが、避難民となっている。
・その出自の経緯もあってか、ユイナ姫やライナスとは互いに複雑な心境を抱く(かも)。
・紳士的だが脳ミソ筋肉なところがあり、考えるより先に動いてしまう。
・頭を使うのが根本的に苦手なので、策を用いる事を知らない。
・ちなみに好物は魚料理。川魚が特に大好き。

登場時点からかなり不遇な扱いだが、かなり強い。
パワーだけなら現状の主力部隊でも随一のものを誇っているので、
今後色々と活躍の場がありそう。エレインの素直さと、レオンの馬鹿な子ぶりを
程好く受け継いだユーティリティプレイヤーとしての活躍に請う、ご期待。

テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

第二章−第三幕− ライゼリーネ・タウン防衛戦

ライゼリーネ・タウンに迫るスプレッダー幼生体の目の前に、
勇者軍はほどなく到着した。後ろに控えるもう一体が気になるが、
速やかに駆逐しなければ話は始まらない。
下手をすれば二体とも突破され、町に多大な被害がもたらされる。
最低限、一体だけでも最優先で撃破しなければならなかった。

(もう一人……せめてもう一人いれば……!)
シエルの焦燥が、露骨にジルベルトに伝わる。
しかし一度撃破した経験からか、ジルベルトは充分に落ち着いていた。
(大丈夫)
ジルベルトが頭を撫でてやる。
(勝てる。僕等は勇者軍だから)
(分かってる。やるわ)
シエルはすぐに落ち着きを取り戻し、呪文の詠唱に入る。
真っ先に動き出したのはジークだった。
ソニアに代わって、シエルのディフェンスとして盾となるのである。
「うむ、一宿一飯の恩義という感じが程よい!」
いちいち大仰に恩を売ってみせるジークに、
ようやく、らしさを取り戻したシエルが檄を飛ばす。
「そう思うんならきっちり守ってね! 呪文の詠唱も大変だから!」
「任せてもらおう!」
そして、ソニアは走り出す。スプレッダー幼生体へ向けて。
「はああああああッ!!」
凄まじい気迫と共にソニアが一直線に戦場を駆ける。
「ぎきゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
スプレッダーの幼生体は吠えながらも何故か川の上で動きを止めた。怪しい。
ユイナ姫がいつでも動けるよう、愛馬チトセを待機状態のままにしておく。
ジルベルトもソニアの傍に付くために動き出した。

「スプレッダー幼生体、覚悟!!」
ソニアが跳躍する。スプレッダー幼生体の多脚がソニアを襲うが、
ソニアは手甲一つで、それを弾き、または受け流し、さらにはそれを掴み、
アクロバティックに身体を動かし、その顔面に一発拳を叩き込もうとする。
「もらったわよ!」
しかしスプレッダー幼生体も諦めが悪い。
爪を大きく振り下ろし、ソニアを切り裂きにかかる。
がつっ!
ずさささッ!!
大きく打ち払われ、ソニアはよろけるも、見事に後ずさりつつ着地する。
「やるわね!」
ソニアは牽制のために呪文を即座に詠唱する。
「グランドバスター!」
地の属性を持つ魔力弾をもって、多脚を牽制しようとしたのだ。
しかし、目論見が甘かった。
「ぎゃぁぁぁぁぁがぁぁぁぁぁぁぁ!」
突如、スプレッダー幼生体の口から、圧倒的な水圧の砲撃とも呼ぶべき
多量の水が放出され、ソニアを直撃した。
「がばっ!?」
ソニアに回避の余地は無かった。
そのまま彼女は大きく転倒し、流血を始めた。
「負……っけるもんですかぁッ!」
気丈にも彼女は起き上がるが、すぐにふらつく。
しかし、ユイナ姫に馬上から抱え上げられた事で、
無駄に血気を煽ってしまった。
「放して! あいつに一撃かましてやらないと!」
「そうはいきません、属性的に不利みたいですから、治療を!」
「くっ……!」
ソニアが歯噛みする。しかしそれとは関係なく
シエルは詠唱していた呪文を解放する。
「ヒールバスター!!」
こういう時は詠唱呪文が短くて連打できる呪文の方がいい。
そういうシエルの判断であった。

一方でスプレッダー幼生体の水圧砲攻撃は続いていた。
どうやら川の水を吸収して吐き出しているようで、
その射程は決して長くはないものの、威力は侮れないものである。
一人前線に残るジルベルトは危機に晒されていた。
どうやらスプレッダーは、その環境に応じて技が変異するらしい。
この事実は貴重な情報で、全世界に提示しなくてはならないものであるが、
とりあえず自分達が生還出来なければそれどころではないのだ。
(よくもソニアさんを……! いけない、冷静にならなくては)
怒りに心が曇りそうになるが、彼女は無事なのだ。
自分が冷静さを失えば、討伐に時間がかかってしまう。
それは許されないのだ。
「ぎきゃぁぁぁぁ!」
油断していると、また水圧砲が飛んでくる。
(くっ、このままでは……!)
ジルベルトが水圧砲の連打に苦戦していると、ふいに後ろから
人影が現れた。見たことのない男である。
背も高い。誰なのか。
そんな疑問を抱いていると、無造作に男はスプレッダー幼生体に近寄る。
(危ない!? 逃げて!)
ジルベルトが男をかばおうとしたが、男はそれよりも素早かった。

がきゃっ!

いつの間に移動しているのかジルベルトにも識別出来なかった。
男は、スプレッダー幼生体の頭部を剣で一突きしている。
「ぎぎゃぅ、ぎゃっ、ぎゃっ、ぎゃぁぁぁぁぁッ!!」
痛覚にスプレッダー幼生体が身をよじる。
と、男はそこでようやくジルベルトに言葉を投げかける。
「ご苦労様。苦戦してるみたいだね?」
その殺伐とした戦場にあまりに似合わない柔和な声。
(一体、誰?)
ジルベルトの疑問が首をかしげる形となって現れる?
「おっと、自己紹介もしてなかったか。誰かは知らないけど、
 俺はライナス=ジーニアスって言うんだ。協力させてもらうよ」
(ジーニアス?)
もちろんジルベルトはその姓に聞き覚えがあった。
勇者軍メインメンバー、ジーニアス家のことであろう。
となれば、まぎれもなく、初対面かどうかすらも関係無く……仲間なのだ。
そんな間にもスプレッダーはひたすら暴れる。
「疾風剣!」
超音速の斬撃が、何度斬ったかもよく分からないほどに
スプレッダー幼生体を滅斬りにしてしまう。
恐らく、もう水圧砲など使い物になるまい。
(速い……速すぎてよく分からない……)
「で? 俺は何をすればいいのかな?」
ものの数秒で数十撃を叩き込んでからあっさりとのたまう金髪の男。
これだけ圧倒しておいて、この物言い。
頼もしいという言葉が相応しくないなら、もう惑星アースに該当する言葉は無い。
水圧砲の使えないスプレッダー幼生体など怖くも何ともない。
だとすれば、彼にはもっと大事な役割を負ってもらおう。
そう思ったジルベルトは、かなり遠くに見えるもう一体の
スプレッダー幼生体をただ、指差した。
(あっち)
しかし、ジルベルトが指を指し終える前に金髪の男は動いていた。
察しが良いというべきか、言動にいちいち意味が無いというべきか。
そこにジーク、そしてユイナ姫が援護に駆けつけた。

「ジル君、今の誰!?」
(味方)
ジルベルトの真意は、しかしあまり伝わらなかった。
首を振っただけなのでしょうがないかもしれない。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
スプレッダー幼生体はなおもしつこく暴れ回る。
水圧砲を使うための口を破壊され、怒り心頭だ。
もはや前進に躊躇は無いのだろう。
「とどめだ、隊長、行くぞ!!」
(うん)
誰にも聞こえないほどの小声ながらも、ジルベルトは詠唱を始める。
(ライトキャノン)
そしてやはり小声での呪文解放。しかし親譲りの
かなり高い魔力によって、スプレッダーへ大ダメージとなった。
「ジーク=ルーンヴィッツァー、参る!!」
そしてジークの一撃が光る。

ざしゅっ!

コアとも呼ぶべき部分にヒットしたのだろうか、スプレッダー幼生体は
それきり動かなくなった。
「ユイナ姫、もう一匹はどうだ!?」
ジークの言葉に、周囲を見回すユイナ姫。
すると……
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ……ぁぁぁ……!」
遠くの方からスプレッダー幼生体の断末魔。
どうやらライナスが一人でとどめまで刺したらしい、と分かると、
ジルベルトは安心する、その後ろから、治療行為を終えた
シエルとソニアも合流してきた。
(彼がやってくれたみたい)
(彼?)
ジルベルトの思いをすぐさまキャッチするシエル。
(ライナスって名乗ってくれた。ジーニアス家の人みたい)
(本当!? ならとっても助かるわね!)
シエルの表情に歓喜が生まれる。
「みんな聞いて。スプレッダー幼生体、2体目も駆逐されたわ。
 やったのは、私達の仲間……勇者軍メインメンバーみたいよ。
 名前は、ライナス=ジーニアスだってお兄ちゃんが」
「ほう!? 一人でか、やるもんだな!」
ジークがまず驚愕する。ソニアやユイナ姫も頷く。

「ふう」
そこへライナスが戻ってきた。
「さて、俺以外にスプレッダー幼生体の相手をしようなんて、
 無茶な人達がいるなんて、ね。君達は何者かな?」
ライナスの言葉に、シエルが返す。
「彼はジルベルト=ストレンジャー。勇者軍筆頭よ。
 そして私達は勇者軍主力部隊。そしてあなたも今日から
 ここの一員、そうよね、ライナス=ジーニアスさん?」
すると、初めてライナスの顔に驚きが浮かぶ。
「そうか、君達がそうなのか。だとしたらこの事態は
 看過出来なくて当然だよね。じゃあ、改めまして、
 よろしく頼むよ、ジルベルト君?」
(うん)
ジルベルトはただ無言で握手する。
「そんで私が妹のシエル=ラネージュ。無口な兄の翻訳係かな」
「ユイナ=カザミネ=ザン=アーム王女です。あなたとは、親類ですかね」
「ソニア=メーベルヴァーゲン。新米だけどよろしくね」
「ジーク=ルーンヴィッツァーだ、同じく新米だが、よろしく頼むぞ」
それぞれに自己紹介する。
「これはなかなか賑やかな旅になりそうだね、こちらこそよろしく」
歓迎ムードの中、ユイナ姫は指示をも忘れない。
「ビーム・カーテン部隊、ただちにスプレッダー幼生体の死骸を
 除去して下さい……町に近い方からお願いします」
と、そこまで見回してみて不自然に感じた。
どうみてもいないのだ。二体目の死骸が。
「ライナスさん、確かに倒したんですよね? 二体目の幼生体を」
「うん、間違いない。なのに死骸が……無い?」
明らかに異常な事態だった。

一体目の除去作業もそのままに主力部隊は、
すぐに二体目の死亡地点へと向かった。
そこには残留物と思しき物体がいくらか残っていた。
血痕、甲殻の欠片などと、車両の轍である。
要は運搬の後、と言っても過言ではない。
「誰かがスプレッダーの幼生体を無断で持ち去った?」
シエルの疑問に、ジルベルトも頷く事で同意した。
「しかし、誰が!?」
ジークは当然の疑問を抱く。
「彼等ね」
ソニアはそう呟いた。
「アルマ・タウンで死骸の除去作業をしていた最中に
 妨害を企てたあの得体の知れない人間達じゃないかしら」
「そんな人達がいるのか」
ライナスも驚きを禁じ得なかった。
「という事は、俺達の敵はスプレッダーだけじゃないわけか」
「そうです、ライナスさん。私達の敵はスプレッダーを利用して
 何事かを引き起こそうとしている者達も含まれます。
 まずはその真意を確かめる必要がありますね」
ユイナ姫の言葉に、ライナスも、ジークも頷いた。

「で、これからどうするのだ、隊長?」
ジークの更なる疑問に、ジルベルトは手を休めない。
情報端末に飛び込んでくる情報をチェックしているのだ。
(少しずつ駆逐されているスプレッダー幼生体……でも、
 未だに多くの都市が危険に晒される可能性を秘めている)
そして、スプレッダー幼生体の反応がやたらと近い都市を見つけた。
いや、そもそも都市ではない。しかし重要拠点だ。
妖精の森と呼ばれる地点であり、その中には
妖精王ヴァルキリーの居城がある。
そこを襲撃されれば、勇者軍との協力関係に重大な影響が出る。
もちろん看過するわけなどいかない。急がなければならない。

「お兄ちゃんが思うには、次の目標は妖精の森よ」
ジルベルトの意見をシエルが介し、全員が頷く。
(行こう)
ジルベルトが黙ったまま歩き出すと、
誰ともなく付き従い始め、やがて列となって動き出す。
妖精の森へ向けて、主力部隊は歩き出した。


<第三章 へ続く>


テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

Author:たくぼ〜
たくぼ〜です。『たくぼ〜のHTML』管理人です。
1981年生まれの男性、いや、漢です。
ゲーム大好きですが、かなりの偏食家です。
こだわりを持って生きているつもりです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード